学校ホームページの必要条件
         −−児童が作るホームページを目指して−−
  Some necessity conditions for INTERNET Home Page on elementary school
  坂井 岳志   杉山 賢次  
   世田谷区立千歳小学校   都立府中西高等学校  
要約 トロンで開発された「大広間」のWINDOWSへの移植とホームページへの応用を目指し「児童が活用できるか」という視点で,学校ホームページの内容を検討した。また,最近市場に出てきたホームページ作成支援ソフトの検討を行った。それらを基に学校ホームページの必要条件と児童作成の可能性を探り,htmlで作った疑似大広間を開発し,新たなホームページ上で使う児童用ツールの諸条件の検討を行った。
 
 <キーワード> 学校ホームページ 大広間 インターネット 児童用ツール  
 
1,はじめに
 3年前,トロンのマイクロスクリプトで開発した「大広間」は,そのシンプルな構造から児童用プレゼンテーションツールとして活用されてきた。また「大広間V2」では,ボタン対応の機能を加え,ハイパーテキスト型の表現が可能となった。しかし16色までしか対応していなかったので,写真等の画像の表現力が不十分だった。そこで,今回WINDOWSへの移植が行われた。
 
2,研究の目的と方法
 現在,学校ホームページが急速に数を増やしつつあるが,制作の実状は,少数の教師が自分の家で作り上げているのが現状である。「大広間」で核となってきた「児童でも使えるツール」という発想で学校ホームページを見直し,その必要条件を探った。また,ホームページ作成ツールの検討を行い,htmlで擬似的に大広間を作成してみた。
 
3,学校ホームページの現状
 日本の代表的な学校ホームページを検索しその内容をまとめてみた。
(1)A県,B小学校
@タイトルページ
・タイトルページは,画像ソフトで作成した
シンプルな作り。塗りこんだボックスの上に
内容を文字で表示。呼び込みもスピーディー。A表示スピードと質
・写真画像が大きい。表示完了まで時間がか
かる。露出が暗い。
(2)C県 D小学校
@タイトルページ
・華やかなタイトル画面。表示速度は速く内
 
 
容は小さい絵と文章で表示。
A表示スピードと質
小画面による目次を持ち,大きなデータにアクセスする無駄を省いている。文字による案内も行き届いている。
 主な内容をまとめると以下のようになった
学校紹介      校内研究資料紹介
地域資料      各教科資料
児童作品(絵,文) 学習内容
通信利用共同研究  メール交換
他校へのリンク 他のHPへのリンク
 
5,ホームページ作成ツールの現状
 児童がホームページを実際に利用するためには,htmlでは時間がかかりすぎるし,どの学年でもという訳にはいかない。そこで作成ツールを「児童に使えるか」という観点で検討してみた。
@ホームページビルダー(IBM)
 アイコン操作で簡単にホームページの骨格を作ることができる。画像の横にコメントを書くときには通常の方法では一行しか書けない。可能にするにはhtmlを書き直すか,表を事前に作成し画像と文を別の枠に入れる。
Aワードインターネットアシスタント(マイクロソフト)
 普通に書いた文章を,そのままhtmlにできるという特徴を持つ。簡易実行時では,完全にhtmlで実行したときと同じ画面にはならない。ブラウザの方がわかりやすい。
Bその他
・HOTALL 95・Web Desighner・ホームページメーカー
C疑似大広間
 htmlで作ったホームページ上の大広間。決められた場所に画像や文章を張り込む。縦横リンクの考え方はここでも生きている。
 
 
 
 
             疑似大広間で作成した入学式の画面例。 
 問題はどのソフトも画像ファイルの張り付け時のファイル操作が難しいこと。使っているマシンのディレクトリ構造に精通していないと画像を持ってきにくい。児童が利用できるようにするためには,画像ファイルを決まったディレクトリに持ってきておく必要がある。直感的に作業するためにはドラッグ&ドロップが一番いいと思われる。概ね,操作は容易であり教員は使いこなせるだろうが,児童が使えるかどうかは微妙なところ。
 
6,学校ホームページの問題点
 今までの検討をふまえ,学校ホームページの問題点をまとめてみた。
(1)技術的な問題点
@画面に凝りすぎると表示が遅くなる。
A必要な情報に辿り着くのに時間がかかる。
B大きいデータだとダウンロードするのに  時間がかかる。授業中には取れない。
C資料や写真に説明がほしい。
D児童自身が作成するツールが未完成。
(2)内容的な問題
@学習に必要な内容が少ない。
A漢字が難しく,資料へのリンクを張っただ けでは利用できない。
B内容の信憑性の確認方法が難しい。
C資料が多すぎるため,どの内容を採用する かが難しい。
D個人情報保護に配慮していないものがある。
Eどこで資料収集をやめるか判断が難しい。
F児童自身が発信している情報が少ない。
Gリンク先の説明が英語だったり,表現が難 しいなど,児童専用の説明先が少ない。
 
7,児童のための学校ホームページとは?
 繰り返し訪れる価値のある,学校ホームページとはいったいどのようなものであろうか。
 その地域でしか見れない物や文化,歴史,音楽等は社会科での学習に必須であろう。また,地域独自の動植物の画像も理科学習に有効であろう。児童の興味関心も他の学校と共同で追求するなかで高まる。今まで,各学校の教師が単独で学級内だけでしか利用してこなかった教材・教具を,通信による交流の中で共同の教材として生かすことも,学習方法の変革につながると思われる。系統的な知識注入型の授業中心から,児童の興味関心に基づいた発散型の授業に変化させる力を持っている。また教師が一人で児童に対応するのではなく,他へのリンクを通して多くの人々が児童と関わり,発展的な知識への追求が行われる可能性を持つ。
 これらの豊かな学習内容が,表示の工夫や作成の容易さと相まって,各学校のホームページの充実につながるものと思われる。
 
8,課題
 現在は,児童がホームページを作成する状態にはなっていない。発信しているのは教師であり,児童は素材を提供しているにすぎない。画像やファイルの扱いが易しい,児童自身が作成できるホームページ作成ソフトを作成する事が急務であろう。また,学校全体で取り組む体制が必要で,作成している教員が異動してしまったらそこのページは終わりというのでは仕方がない。担当の先生だけに負担をかけては長続きしない。更に授業の中で,デジタル情報を継続的に保存,整理していくことが要求されている。授業方法を変革し児童の興味関心に沿って問題解決型の学習を積極的に採用していくことが基本になるだろう。
 特に緊急に検討しなければならないのは,個人情報の保護であろう。どこまでを個人情報とするのかも検討が必要だ。
 以上の結果をふまえ,大広間の発想を生かした児童用ホームページ作成ツールの開発を目指したい。
 
参考文献
(1)坂井 岳志「授業におけるプレゼンテーションの活用」95年日本教育工学会 pp401-402
 
*本研究は松下視聴覚教育研究財団の協力で行われています。