7.アンテナ
 みなさんが作ったラジオは音を大きくする装置(アンプ)を持たないので、なるべくたくさんの電波を集めないと聞こえません。そのためになるべく大きなアンテナを作ってください。このラジオで一番重要な部品です。
 アンテナは空中に飛びかっている電波を吸収し、電流にかえる働きをしています。導線に当たった電波は導線に吸収され電流に変わります。簡単に言うと大きなアンテナはたくさんの電波を吸収し大きな電流を作ります。大きいということは、ただクモの巣のように長い線を張ればいいというものではありません。なるべく高く、なるべく長く張ります。最低4m位あればいいでしょう。
 アンテナを張る場所は電波が来ている必要があります。電波はどこでも飛んでいくわけではありません。たとえば団地やマンションの鉄筋コンクリートのように金属(鉄筋)に囲まれたような場所では電波は金属に吸収されて中に入ってきません。そのときは外に張ります。また、高いビルの陰では電波の陰になることも考えられます。東京付近では埼玉県戸田市、川口市近辺にTBS、文化放送、NHKの送信所(電波を出すところ)がありますので、送信所の方向が開けたところにアンテナを張るとよいでしょう。
 アンテナを張る場合は、他の金属にアンテナがふれると電流が逃げてしまうので、ベランダの手すり等の金属につなぐときはビニルひもで絶縁してからつなぐようにしてください。
 張り方:導線(エナメル線、電源コード、針金等)とビニルひもを用意します。なるべく高いところ、たとえば庭の木、マンションならばベランダの物干しなどにビニルひもを結びその先に導線をつけます。なるべく屋外の高いところを通して室内に引き込みます。その際ベランダの手すりや、アルミサッシなどの他の金属部分に導線がふれないように注意します。
*最近はあまり見ませんが黒電話の指止めの金属につなぐとよく聞こえます。自宅にあるかたは試してみてください。(もちろん電話線につながっているもの。)
8.使い方
 ワニ口クリップをアンテナにつなぎ、イヤフォンを耳にいれ、コンデンサを出し入れし、放送がつよく受かるところでとめます。放送が受信できる位置に印を付けておきましょう。電池がないのでつけっぱなしにしておいても気にすることはありません。放送局の送信所が近い場合ではうるさいくらいに鳴ります。

9.応用
 @コイルの大きさや巻数をいろいろ変えてみる。:厳密にいうと放送局の周波数で感度の高いコイルの巻数は決まってしまいます。したがって巻数の違うコイルをいくつか用意してつなぎ方を変えてみるのも良いでしょう。またコイルの直径を変更してみるのもおもしろいかも知れません。自分の部屋の大きさのコイルで実験した人もいます。
 Aダイオ−ドによっても少しですが感度がかわります。また、方鉛鉱や黄鉄鉱に針をたててもダイオードの代わりになります。(鉱石ラジオといわれる由来です)いろいろ試してみるとよいでしょう。


(3)基板
基板の端にハトメを止めます。コンデンサは寝かせて接着剤やガムテ−プで張り付けます。
 部品を図のように接続します。配線するときに注意することは、エナメル線の被覆を紙やすりできれいにはがし銅の色が見えるようにしないと電気をながしません。基板のハトメに図のように部品を半田付けします。
*ハンダ付けの方法:ハンダ付けをするときはハトメと導線をハンダでぬらしてからつけるとうまくいきます。また、ハンダごてに溶けたハンダを乗せて、それでつけようとすると、松ヤニが蒸発してしまってうまくくっつきません。正しいハンダ付けは、先にハンダごてで部品を熱し、熱した部品にハンダを当てて溶かすのです。それが難しいときは、松ヤニをアルコールで溶かしたペーストを作っておき、これを部品に塗ってからハンダ付けするとうまくいきます。
*ビニル線の被覆をむくとき、ニッパーやカッターでやると心線に傷を付け切れやすくなります。ハンダごてのねじにブリキの板を付けた物を使い、熱いブリキにビニル被覆を当て、一回転させると被覆が溶けてきれいにむけます。

6.音が出ない場合:音が出ない原因のほとんどは誤配線と接触不良、それにコンデンサのショートです。
@「エナメル線の被覆をきれいにはがしましたか?よく確認してください。
Aハンダ付けをしたところはハトメと導線がハンダでぬれた状態になっていますか。
Bコンデンサのアルミホイルが紙からはみ出してショートしていませんか。
C受信できる範囲がずれている可能性があります。たとえばTBSはコンデンサの中央付近、NHKは中央より入れたところ、文化放送は中央より出たところで受信できます。これがずれていたり、端のほうの局(NHKなど)が受信できないときはコンデンサを作り直してみます。
Dそれでも受信できないときはアンテナがよくない場合です。下の7をよく読んでよいアンテナを作ってください。


2.構造:このラジオは主に4つの部分からできています。
@電波を集めるアンテナ:普通のラジオに入っているアンテナはせいぜい10cm以下ですが、この場合最低でも4〜5mはほしいところです。空中を飛んでいる電波がアンテナに当たると電流に変わります。
A数ある放送局から一つを選び出す同調回路:これは導線を筒に巻いたコイルと電極を向かい合わせたコンデンサからできています。アンテナから来た電波の中から目的の放送局の電波を選びます。コンデンサの向かい合わせた面積を変えることで選局できます。
B電波に乗っている音の信号を取り出す検波回路:ダイオ−ドという電流を一方向にしか流さない半導体を使います。
C放送の信号を音に変えるイヤフォン:クリスタル・イヤフォンと呼ばれるものを使います。クリスタル型は特に感度が高く小さい信号でも聞くことができます。普通のラジオなどに使われているもの(マグネチックイヤフォンまたはダイナミックイヤフォン)は感度が低く使えません。
3.部品の説明と入手法
 部品は安価です。以下の部品でダイオードとクリスタルイヤフォンはDIYショップか東京秋葉原、大阪日本橋の電気部品の店にあります。
(1)ボ−ル紙:コイル・コンデンサを作るのに使います。17cm×9cmと18cm×9cm各1枚、コイル用12cm×12cm1枚。
 お菓子の箱などを分解してください。ボール紙にも「目」があることを知っていますか。つまり、曲げやすい方向と、曲げにくい方向があります。曲げやすいように切り取ってください。
(2)薄いベニヤか堅いボール紙18cm×9cm:部品を取り付ける基板にしますが厚いと加工が大変です。
(3)アルミホイル:台所から失敬すればいいでしょう。
(4)直径0.5oのエナメル線10m:短いものしかないときにはつないで10mになればつかえます。太さは0.4〜0.6mm位でもかまいません。あまり太いと巻いたり、配線したりするのがやりにくく、細いと切れやすくなります。(\200-300)
(5)検波用ダイオ−ド(ゲルマニウムダイオ−ド):型番1N60、SD46、1K34など 無ければ「検波用」と言ってください。ただし、同じダイオードでも「整流用」や「スイッチング用」は形が似ていても聞こえません。必ず「検波用」と指定してください。(\100前後)
(6)クリスタル・イヤフォン:普通の電気店で売っているマグネチックイヤフォンはダメ。必ずクリスタルイヤフォンと指定してください。(\200-300)プラグ付きがありますがこのラジオではプラグは必要ありませんので切り取ります。
(7)ミノムシクリップまたは、わに口クリップ:大きさは「中」が使いやすいでしょう。無ければ書類をはさむクリップ(金属製)でもよい。(\100)
(8)ビニル線:長さ50cm〜1m、35cm、15cmの3本
(9)ハトメ:書類を束ねるときに使うものです。5個必要です。
(10)工具:一般家庭にあるものでだいたい作れます。はさみ・ものさし・紙やすり、カッター・ホチキス・はんだごて・ハンダ・ハトメ用のペンチ(なければ太い釘と金槌でよい)セロテープ・のり等

●もし、いらないラジオやテレビがあればダイオ−ド、ビニル線、エナメル線が取れるのでごみ捨場を物色してみるのもよいでしょう。ただしドロボ−とまちがえられないように!
 ラジオを作るというと、何か特別な技術が必要だと思うかも知れませんがこのラジオは誰にでも作ることができます。ただ、みなさんが使っているような高性能なものでなく、AMのみ、イヤフォン専用でアンテナが必要なため、持ち歩きながら聞くことはできません。このラジオは一般に「鉱石ラジオ」「ゲルマニウムラジオ」と呼ばれるものです。

1.原理:放送局では音を電波に乗せて発射しています。ラジオは空中を飛んでいる電波をつかまえて音に変える装置ですが、電波を直接音に変えただけではスピ−カを鳴らせるような大きな音にはなりません。そこで普通のラジオでは音を大きくする「アンプ」というものを使い、大きな音にしています。しかしアンプは素人の手におえるものではないので、このラジオには使わないことにします。そのかわりに大きなアンテナ(普通のラジオには超小型のアンテナが内蔵されている)を使い、電波をたくさん集めます。そうするとアンプがなくても何とか聞くことができます。そのかわり電気を食うアンプがないので、当然電池はいりません。

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